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柳川泰昭先生が令和2年度日本感染症学会 北里柴三郎記念学術奨励賞を受賞しました

お知らせ
更新日:2021年6月1日

柳川泰昭先生が令和2年度日本感染症学会 北里柴三郎記念学術奨励賞を受賞しました

 日本感染症学会北里柴三郎記念学術奨励賞は、一般社団法人日本感染症学会によって日本感染症学会とそれに関連する領域において優れた研究を発表した学会員に対し授与されるものです。柳川泰昭先生が、先日ご紹介した第9回箱根山奨励賞受賞に続き、この日本感染症学会 北里柴三郎記念学術奨励賞を受賞しました。

令和2年度 北里柴三郎記念学術奨励賞授賞式

研究論文タイトル
Clinical Features and Gut Microbiome of Asymptomatic Entamoeba histolytica Infection

概要
 アメーバ赤痢は、腸管寄生性原虫症の一つであり、感染症法5類感染症に指定されています。重症例では、粘血便を伴う腸炎や血行性播種による肝膿瘍を発症し、時に致死的となる一方、感染者の約9割は、本論文で検証されている『無症候性持続感染』を呈することが知られております。
 無症候性持続感染者は、適切な治療が行われない場合、約2割が侵襲性アメーバ赤痢を発症し、なおかつ、糞便中へ病原体を長期間排泄し続けることから、感染拡大における主要なリザバーとなります。即ち、無症候性持続感染者の早期診断・早期治療は、臨床および公衆衛生上、極めて重要事項であります。一方で、無症候性持続感染者の病態は殆ど知られておらず、早期診断は非常に困難であります。このような背景に対し、本論文は、アメーバ赤痢の無症候性持続感染について、未知の臨床像を明確にし、更に病態に対する深い示唆を与えております。
 臨床像の解析では、無症候性持続感染者であっても大腸内視鏡検査で肉眼的潰瘍性病変を必ず有すること、潰瘍性病変の局所所見は症候性のアメーバ赤痢例と類似しているが、無症候性持続感染者では病変局在が盲腸周辺に限局していることを明らかにしました。更に、本論文では、無症候性持続感染者体内で生じる病原体 (Entamoeba histolytica) の病原性抑制機構解明にも迫っており、多くの無症候性持続感染者が、シスト型E. histolytica (cysts) を排出するにもかかわらず、大腸粘膜局所からは栄養型E. histolytica (trophozoites) が同定されることを報告しました。即ち、E. histolyticaのシスト化は腸管組織内ではなく腸管内腔で起こり、シスト化には腸内細菌が深く関与していることを明らかにしました。腸内細菌叢がアメーバ赤痢の重症度に及ぼす影響力は、先行研究でも指摘されていたものの、腸内細菌叢が病原体の病原性抑制やシスト化に関わっていることは、本研究で初めて明らかにされたのであります。
 本研究内容は、病原体と腸内細菌叢の相互作用の面から解析しており、アメーバ赤痢における重症化抑制機構を解明するためのターニングポイントとなるものと考えております。

 

 令和2年度日本感染症学会 北里柴三郎記念学術奨励賞を受賞した柳川泰昭先生よりコメントをいただきましたので、ここにご紹介いたします。

 アメーバ赤痢に関する臨床学的な新しい知見に加え、腸内細菌叢の解析結果を融合させた報告を評価いただきました。それ以外に、国内のアメーバ赤痢に関する疫学的研究、診断検査系に関する研究など、アメーバ赤痢の問題解決に向けて、包括的に取り組んでおります。 本賞をきっかけに、今後もアメーバ赤痢の病態解明に向けた研究を邁進してまいります。

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