ACC診断と治療ハンドブック

日和見疾患の診断・治療

口腔食道カンジダ症

Last updated: 2022-09-29

病原体

ほとんどの感染は、Candida albicansにより引き起こされる。近年は、Fluconazole(FLCZ)耐性C. albicansnon-C. albicans (特にC. glabrata) による症例も報告されているが主にFLCZの繰り返しまたは長期間の暴露による結果である。

臨床像

口腔食道カンジダ症は、免疫不全の指標であり、CD4<200でよく確認される。
食道カンジダ症は口腔カンジダよりも低いCD4で発症しやすい。

口腔咽頭カンジダ症

(写真1,2)
 口腔咽頭カンジダは、無痛性の剥離可能な白苔である。白苔を伴わない発赤班またはびまん性の舌の発赤として発症することもある。基本的に軽症例では無症状が多く偶然に見つかることも多い。病変が広範囲になると軽度の痛みを自覚するようになる。本症を疑ったら嚥下時違和感など食道カンジダ症を示唆する症状も確認が必要である。

写真1

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写真2

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食道カンジダ症

(写真3)
 食道カンジダは、通常は胸骨後部の灼熱感、違和感や嚥下痛を呈する。一方、無症状で内視鏡で診断されることもある。また写真3のように食道カンジダ症による分厚い白苔に覆われて、その下の食道粘膜の観察が不十分となり、食道潰瘍を見逃すリスクもある。嚥下時痛が強い場合には、CMV, HHV6, NTM, HPV, Lymphomaによる潰瘍病変を合併していることも念頭に精査を進めるべきである。

写真3

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診断


口腔咽頭カンジダ症

 上記の臨床像と肉眼的所見からの臨床診断で十分である。臨床的にFLCZ耐性が疑われる場合などでは、白苔の培養検査を実施が勧められる。口腔カンジダ症と誤診されやすい毛状白斑症の所見を写真4に示した。本症は舌縁部が好発部位であり舌表面の白色変化で剥離は不可能である。EBV関連疾患であり、細胞性免疫不全に関連して発症する。

写真4

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食道カンジダ症

 嚥下時違和感を自覚している場合には、本症が免疫低下しているHIV患者では主要な鑑別となる。口腔内カンジダがある場合や上部消化管内視鏡がすぐに施行できない場合は、本症と臨床診断してFLCZによる治療反応性をもって治療的診断を行うことがある。
 通常、診断のための上部消化管内視鏡検査は基本的に不要であるが、患者が嚥下時痛を訴える場合には、先述のように他の疾患の鑑別を目的として積極的適応となる。この場合には、粘膜面の観察を十分に行うために、内視鏡実施前に1-2週程度の抗真菌治療を行い食道粘膜の白苔がすべて消失した状態で内視鏡検査を行うことが望ましい。

治療

 粘膜カンジダ症は、抗HIV 治療により免疫機能が回復するまでは、何度でも罹患しうる。一方で、粘膜カンジダ症は自覚症状も軽度でそれ自体は生命予後とも関連しない。口腔内所見や自覚症状を指標に必要に応じて反復治療を行い、軽快後は口腔ケアによる再発防止の指導を行う。アゾール系薬剤の予防投与は薬剤耐性カンジダを選択するリスクがあるので、基本的には行うべきではない。

 



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