HIV感染者の生活の質に関する研究(3年度)


研究者:

井上 洋士 (東京大学大学院医学系研究科健康社会学)
山崎 喜比古 (東京大学大学院医学系研究科健康社会学)
若林 チヒロ (埼玉県立大学保健医療福祉学部社会福祉学科)
関 由起子 (群馬大学医学部保健学科)
市川 誠一 (神奈川県立衛生技術短期大学衛生技術科公衆衛生学)
木原 正博 (京都大学大学院医学研究科国際保健学)


研究要旨

 HIV感染者の社会関係の困難について、その実態と背景にある要因を解明することにより必要な支援策への示唆、さらにはHIV/STD予防介入戦略への示唆を得ることを目的とした調査研究を、平成12年度から3年計画で企画・実施している。一昨年度(初年度)には、ヒアリングとそれに基づく予備調査の実施・分析を行った。昨年度(2年度)は、予備調査結果をもとに本調査のプロトコールを策定した。本年度(3年度)は本調査を実施している。2003年2月20日現在までに回収された132票による中間報告(速報)ではあるが、以下のようにHIV感染に伴う社会関係の困難が広く存在していることが示され、社会関係の困難への着眼は、QOL(生活の質)理解や支援環境整備の上で、きわめて重要と考えられた。

  1. プライバシーを漏洩された経験がある人は23%、差別を受けた経験がある人は30%であった。職場ではHIV感染について、「HIV以外の説明をする」と「特に何も伝えない・答えない」の2種類の匿す行為が支配的であった。差別不安由来の生活自主規制は8割以上が行っていた。

  2. 9割以上が何らかの情緒的サポートを得ていた。ネガティブサポートを受けた経験がある人は25%であった。

  3. 性交渉頻度は、一般住民と比べて全体として低かった。HIV感染を相手に打ち明けられなかった経験は40%、打ち明けて性交渉を断られた・相手が離れた経験を持つ人は各々約15%であった。また性交渉維持について周囲の人々に非難された経験がある人は37%、もう性交渉をしたくないと思ったことがある人は63%であった。性生活に不満足を感じていたのは46%であった。

  4. 大多数が、HIV感染に伴って闘病や日常生活上の様々な困難が生じる、コンドーム使用はHIV/STD感染予防に有効である、性交渉相手をHIV感染から守りたいと意識していた。また77%がHIV感染の貴任は相手にもあるとしていた。

  5. HIV感染者のQOL向上という観点から、HIV感染症、及びHIV感染者の日常生活と性生活維持の重要性について、社会の関心と理解を深めて欲しいということは、今回の対象者共通の願いと思われた。

※「研究要旨 」のみ収録しております。