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【 始めに 】
HIVの流行は、大きく2つの流行波から構成される(図1)[1]。第1波は、リスクの高い行動、すなわち同性間性行為や薬物静注による鋭く小さな流行波で、第2波は比較的リスクが低いと考えられる行動、つまり異性間性行為による極めて大きな流行波である。すでに、同性間性行為や薬物静注による感染がおおむね沈静化しつつある欧米諸国は、第1波から、第2波への移行期にあると考えられ、アフリカ・アジア諸国では、当初から事実上第2波に突入し、深刻な流行に見舞われている。これまでの情報を統合すると、わが国の流行は、まだ第1波にさしかかったばかりと考えられるが、社会的関心が薄れる一方でHIV感染者が増え、ピルが解禁され、しかも抑制に資する材料が皆無に等しい現在の状況がこのまま続けば、21世紀はわが国にとって、「第二のエイズの時代」となることが強く懸念される。
「HIVの疫学と対策に関する研究」(1988-96年)を、実質的に継承する形で行われた「HIV感染症の疫学研究」は、こうした時代認識に立ち、諸外国との学術協力を強化する中、来るべき21世紀の本格的流行への対応に貢献できるような研究の質の向上と、疫学と社会科学のバランスのとれた研究体制への構造改革を図るという戦略的目標のもとに実施された。

【 研究の目的 】
わが国のHIV/AIDS流行の現状・将来動向、HIV/STD関連知識やリスク行動の状況、効果的な予防対策についてのエビデンスを示し、欧米のコピーではなく、わが国の社会文化状況に即した、効果的かつ効率的な行政的施策の発展に資する。
【 研究の体系、戦略、運営方法 】
(1)研究体系の概要
図2に研究の体系を示した。リスクレベルの様々に異なる集団(HIV感染者・AIDS患者、STD患者、薬物静注者、MSM[男性と性行為をする男性]、若者、滞日外国人、セックスワーカー、献血者、HIV検査受検者、妊婦等)を対象とし、行動学的研究(HIV/STD関連知識、性行動、検査行動)、血清疫学的研究、分子疫学的研究、厚生省エイズ動向調査データの分析、数理疫学的研究を方法としてわが国のHIV流行やリスク行動の現状や動向を把握あるいは推計すると共に、それらに基づいて、現実性の高い近未来(外挿法)と中長期(数理モデル)の流行予測を行う。数理モデルでは、様々な予防対策(例:コンドーム普及)のシナリオを想定し、その効果を数量的に評価する。推計・将来予測と医療費調査(レセプト調査)を組み合わせれば、HIV流行が、現在あるいは将来のわが国の医療に及ぼすインパクトを見積もることも可能である(医療費経済的研究)。一方、種々の調査の成績に基づいて、予防介入を優先する集団(例:滞日外国人、MSM)を想定し、コミュニティレベルの準実験的な予防介入研究を実践し、有効な予防対策モデルを提示する。

(2)研究運営の戦略
HIV/AIDSの研究には、研究一般に伴う問題に加えて、以下のようなHIV/AIDSに固有の困難があるため、通常の疫学研究のアプローチを直接持ち込むことはできない;(1)HIV感染者・AIDS患者、男性同性愛者、滞日外国人などに対する社会的差別・偏見の存在や長い潜伏期間などのために、HIV感染が意識的・無意識的に潜行しやすく把握が困難であること、HIV感染の主な原因が性行為という微妙な行動であることや、売買春、薬物使用、不法滞在の非合法性のために、対象者に対するアクセスが難しいこと、(3)従来の保健関連研究が無意識に利用してきた、調査者と被調査者間の”権力構造”がHIV/AIDSの研究では通常機能せず、研究をするにあたっては両者のパートナーシップの構築から始めなければならないこと、(4)HIVの研究に不可欠な社会科学的方法論(行動学的研究や予防介入研究)の蓄積が、わが国の保健関連研究の分野では希薄であること。
以上の問題を克服し、研究を効率的に推進するために、以下のように戦略的に研究を実施した。
(3)研究体制とピアレヴュー
それぞれ研究内容の異なる約20のグループ(97、98年19グループ、99年18グループ)の体制で研究を行った。各グループは、必要に応じて、複数のサブグループで組織された。1996年以前までの複雑な組織構造を改めて、各グループが主任研究者に直結するように平坦化し、グループ間の研究交流が闊達になるように配慮した。
研究協議会(顧問及びグループ長で構成)を設置し、各年度の初頭には、各グループが作成した研究計画書の内容を審査した。年度末の研究発表会では、顧問とグループ長が各グループの研究発表について、研究方法の妥当性、研究チーム構成の妥当性、研究成果の重要性、研究の発展性、プレゼンテーションについて、評価用紙に基づき、無記名で厳格に採点評価し、その結果を研究費の配分に反映させた。
【 今期研究の主な到達点 】
こうした研究戦略と研究体制の結果、今期は、当初意図したように、社会学的研究の大幅な強化が実現すると共に多くの重要な研究成果が得られ、それ以前の試行錯誤的段階を脱して、わが国のHIV疫学研究は量的にも質的にも新しい段階に到達したと考えられる。今期になって初めて得られた研究成果としては、(1)MSM研究において、研究者、行政、コミュニティ、NGOが参加する研究組織(MASH)の構築が進展し、本格的なコミュニティレベルの予防介入の準備が進んだこと、(2)MSM自身の研究参加により、多くの知識・性行動調査が実施され、実態解明が大きく進んだこと、(3)大規模な性行動調査が初めて実施され、日本国民の性行動の動向と特徴、大学生、STD患者の性行動が明らかになったこと、(4)コミュニティレベルでの滞日外国人(ラテン系、タイ系)研究が進み、知識・行動の実態の解明が進むと共に、初めての準実験的研究デザインの予防介入研究(quasiexperimentation)が実施されたこと、(5)性風俗関係者自身によるセックスワークの研究が開始され、わが国の性風俗産業の実態解明の取り組みが始まったことがあげられる。
また、(1)分子疫学的研究により、わが国のHIV-1流行株がB型からE型にシフトしたことを明らかにしたこと、(2)数理疫学的に近未来及び中長期の流行予測を実施するとともに、コンドーム普及の予防効果の大きさを数量的に明らかにしたこと、(3)日本人と英米白人の異性間AIDS患者の比較から、わが国の異性間感染速度が遅いわけではないことや日本人患者の年齢が有意に高い事実を示した研究は、今期特筆すべき重要な成績と考えられる。この他、(4)全国的調査によって、母子感染の予防の可能性が示され、予防対策マニュアルが作成されたことも今期の重要な成績であり、その他、医療費、東海地区MSM、薬物乱用・依存者、STD患者、妊婦、風俗関連施設利用者、カウンセリング関連の研究についても、着実なデータの蓄積が行われた。
国際的学術交流も今期特に進展し、3回の国際シンポジウム、2回の国際セミナーを実施し、社会科学的研究においても、米国、オーストラリアとの研究協力を実現した。
最後に、社会的な貢献という観点からは、推計将来予測のデータ、献血検体のHIV抗体陽性率が流行度に比して国際的に異常に高いことを示したデータ、全国性行動調査のデータは多くのメディアに取り上げられ、エイズ問題への社会の関心を喚起した。また、1998年度には、政策提言の一環として、血液の安全性対策の緊急の強化の必要性を認めて、「健康危険情報」を、厚生省保健危機管理調整官に提出した。
【各研究グループの研究方法と主な研究成果 】
| 研究グループ | 将来予測・推計 (橋本修二) |
| 研究の目的・ スケジュール |
わが国のHIV/AIDSの推計値や将来動向を明らかにするための研究。 1997-98年:推計、近未来予測 1999年:中長期予測、対策効果のシュミレーションと感度分析 |
| 主な研究成績 |
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| 研究グループ | 国内疫学情報解析 (中村好一) |
| 研究の目的・ スケジュール |
主としてHIV/AIDSサーベイランスの情報の限界を補完するための研究。 1997年:国内疫学データの質の検討 1998年:デルファイ調査。人口動態統計によるエイズ死の分析 1999年:感染症新法下のHIV/AIDSサーベイランスの問題点の分析、感染経路不明例の追跡調査、届け出に関する医師調査、日和見感染症の分布 |
| 主な研究成績 |
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| 研究グループ | 海外疫学情報解析 97年(梅田珠実)、 98-99年(鎌倉光宏) |
| 研究の目的・ スケジュール |
海外疫学情報の収集分析と、わが国の流行の特徴や流行との関連を明らかにする研究。 1997年:国際的な疫学情報源の調査 1998年:国際疫学情報の収集・分析。サーベイランス法の国際比較。 1999年:国際疫学データ、入出国統計からの滞日外国人感染者数の推計、日英米のAIDSサーベイランスデータ分析 |
| 主な研究成績 |
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| 研究グループ | 医療情報解析 97年 (木村 哲)、 98-99年(木村博和) |
| 研究の目的・ スケジュール |
HIV/AIDS医療の経済的インパクトを明らかにするための研究。 1997-99年:レセプト調査による病期別、追跡調査別の、外来、総医療費の調査。 |
| 主な研究成績 | 月額医療費は、多剤併用療法開始前(1995年調査)は、AC1群(CD4数≧500)で8,000点、AC2群(200<CD4<500)で38,000点、AC3群(CD4≦200)で104,000点、AIDSで404,000点であったのが、開始後はそれぞれ、169,000、217,000、246,000、208,000となり、AIDS非発症例(AC1〜AC3)で大幅に増え、逆にAIDSで減少したことを示した。 |
| 研究グループ | 感染者/患者 T (松本孝夫) |
| 研究の目的・ スケジュール |
HIV感染者、AIDS患者の臨床実態や予後を分析する研究。 1997-99年:都内医療機関のHIV/AIDS患者に関する臨床疫学的分析。 |
| 主な研究成績 | 1985年以来登録された都内の約800の非血友病症例をフォローアップ調査し、AZT導入後のAIDS症例の予後の改善、男女間での予後の違い、指標疾患の分布の変化(カリニ肺炎の減少、非定型抗酸菌増加)を明らかにした。また、HIV/AIDSサーベイランスへの報告率が近年90%を超えていることを示した。 |
| 研究グループ | 患者・感染者U (松田重三) |
| 研究の目的・ スケジュール |
患者・感染者のパートナーリレーションシップを行動学的に明らかにするための研究。 1997-1998年:患者・感染者へのアンケート調査 |
| 主な研究成績 | 90症例につき調査し、半数がたまたまの検査で陽性と判明していること、多くが感染相手を特定できず、不特定の相手とは無防備の性交をする傾向のあること、医師のカウンセリングが感染者の性行動に大きな影響を持つことを示した。 |
| 研究グループ | MSMT (市川誠一) |
| 研究の目的・ スケジュール |
MSMのコミュニティーレベルでの予防対策を構築するための研究。 1997-99年:HIV感染の動向に関する研究、日本及び米国の日本人男性同性愛者の知識、行動に関する疫学的、社会学的研究 1998-99年:大阪及び東京におけるHIV/AIDSの予防啓発介入研究(モデル構築) 1997-98年:米国在住の日本人MSMの性行動調査 |
| 主な研究成績 |
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| 研究グループ | MSMU (磯村 思无) |
| 研究の目的・ スケジュール |
MSMのHIV/STD感染率や性行動を明らかにするための研究。 1997-99年:東海地区の一部のバスハウスを利用する同性愛者を対象に、HIV/STDsと性行動に関する継続調査。 |
| 主な研究成績 |
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| 研究グループ | 滞日外国人 (木原正博) |
| 研究の目的・ スケジュール |
滞日外国人のコミュニティーレベルでの予防対策を構築するための研究。 1997-1999年:HIV抗体陽性率調査 1997-1999年:エイズ相談事業における相談件数・内容の経時観察 1997-1999年:社会疫学的研究デザインによるわが国で初めての予防介入研究の実施(1.滞日ブラジル人、2.滞日スペイン語系住民、滞日タイ人) |
| 主な研究成績 |
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| 研究グループ | 薬物乱用・依存者 (和田 清) |
| 研究の目的・ スケジュール |
薬物乱用・依存者のHIV感染率、性行動を明らかにするための研究。 1997-1999年:薬物中毒治療施設の全国的ネットワークの構築。薬物使用者のHIV/STD肝炎の検査や針刺し・性行動及びHIV感染率の継続的モニタリング。 |
| 主な研究成績 | 年間500人台の新患者をモニタリングできるIDU入院患者の全国サーベイランス網を確立し、過去1年の回し打ち経験が高率なこと、HCVはほぼ1/2が陽性(HIVは陰性)であること、風俗の利用を含め、性行動が活発で、コンドーム使用が低率であることを示した。1998年度からはIDU自助グループとの連携に成功し、その行動調査を初めて実施した。 |
| 研究グループ | STDクリニック受診者T (熊本悦明) |
| 研究の目的・ スケジュール |
STD患者のHIV感染や種々のSTD感染状況を明らかにするための研究。 1997-1999年:STD医療機関の全国的ネットワークにおける、STD患者のHIV/STDs抗体陽性率の経年的モニタリング。 |
| 主な研究成績 | 合計4000例以上のSTD症例の血清を、匿名非特定で収集し、HIV抗体、肝炎抗体、クラミジア抗体、ヘルペス-2抗体等を測定し、男性症例4215例中9例(0.21%)の陽性者を検出した(陽性者はいずれも関東地域)。その他、ヘルペス-2抗体を高率に検出した。また子宮頸部癌の発生に関連するHPV感染の調査では、10代、20代で感染率が高いことを明らかにした。 |
| 研究グループ | STDクリニック受診者U (大里和久) |
| 研究の目的・ スケジュール |
わが国のSTD患者の性行動や検査行動の特徴を経時的あるいは横断的に明らかにする研究。 1997-1999年:大阪某医院に十数年蓄積された性行動調査データの分析 1997-1999年:STDクリニック受診者の行動科学調査のための全国7大都市ネットワークの構築と本調査の実施。 |
| 主な研究成績 |
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| 研究グループ | 風俗関連施設利用者 (大山泰雄) |
| 研究の目的・ スケジュール |
ラブホテル利用者におけるコンドーム使用率の観察と予防介入の開発に関する研究 1997-1998年:関東地域のラブホテルにおける廃棄物から、HIV抗体陽性率とコンドーム存在率の経時観察。 |
| 主な研究成績 | ラブホテルというわが国特有の性行為の場における疫学的研究の可能性に着目し、ピル解禁前の状況を把握するために、1996年以来の継続調査を実施した。ラブホテル利用者のコンドーム使用率が、ほぼ50%であることを確定し、コンドーム破損率(使用時0.27%)に関するわが国初のデータを得た。HIV抗体陽性率はゼロ(n=1577)であった。 |
| 研究グループ | 血清・遺伝子疫学 (今井光信) |
| 研究の目的・ スケジュール |
保健所、献血、医療機関等で判明した検査陽性者の特徴を血清疫学的、分子疫学的に明らかにするための研究。 1997-1999年:全国地衛研ネットワークによる保健所のHIV検査の動向のモニタリング。医療機関、保健所、献血のHIV陽性検体について分子疫学的モニタリング。 |
| 主な研究成績 |
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| 研究グループ | 献血者・妊婦等 (清水 勝) |
| 研究の目的・ スケジュール |
献血者、受血者者、妊婦等のHIV抗体陽性率の経年的変化を明らかにするための研究。 1997-1998年:HIV抗体陽性率の経年的モニタリング 1999年:献血者へのアンケート調査 |
| 主な研究成績 |
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| 研究グループ | 母子感染 97-98年 (喜多恒和)、99年 (戸谷良造) |
| 研究の目的・ スケジュール |
母子感染の実態とその予防方法を明らかにするための研究。 1997-1998年:感染妊婦の出産に関する全国調査 1999年:全国産婦人科医療機関及び小児科にアンケート調査を実施し、妊婦感染率 1999年:母子感染予防対策マニュアルの作成 |
| 主な研究成績 |
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| 研究グループ | 行動科学T 97-98年 (広瀬弘忠)、 99年 (木原正博) |
| 研究の目的・ スケジュール |
HIV/STD予防対策の基礎的情報として、日本人の性行動の実態を明らかにするための研究。 1997-1998年:予備調査(3回) 1999年:わが国で初めての科学的性行動調査として、HIV&sex survey in Japanを実施。 |
| 主な研究成績 |
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| 研究グループ | 行動科学U (木原雅子) |
| 研究の目的・ スケジュール |
様々な集団の性行動の実態とHIV感染リスクを評価するための研究。 1997-1998年:某社会集団の性行動調査 1998-1999年:国立大学生の性行動調査の予備調査と本調査 |
| 主な研究成績 |
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| 研究グループ | セックスワーカー (池上千寿子) |
| 研究の目的・ スケジュール |
CSWにおけるHIV/STD予防対策を探求するための研究。 1999年:日本の性風俗史、風俗営業内容のカテゴリー化、調査票の作成 |
| 主な研究成績 |
性風俗関係者自身による調査体制を初めて確立し;
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| 研究グループ | カウンセリング体制 97年 (桜井賢樹)、」 98-99年 (兒玉 憲一) |
| 研究の目的・ スケジュール |
HIVカウンセリングの体制の現状を的確に把握し、その充実を促進するための研究。 1997年:資格制度、派遣カウンセラー事業等に実態調査。 1998-1999年:医師の意識や利用行動の調査。臨床心理士、医療ソーシャルワーカー(MSW)の研修のあり方、精神障害を抱える感染者の支援体制、献血カウンセリングのあり方等の検討 |
| 主な研究成績 |
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| 研究グループ | 特別研究1 1998年 (木原正博) |
| 研究の目的・ スケジュール |
献血血液のHIV抗体陽性率に関する国際比較研究。 |
| 主な研究成績 | 国際比較により、日本の献血血液陽性率は、流行度に比し、異常に(10数倍)高いことを示した。 |
| 研究グループ | 特別研究2 1998年 (木原雅子) |
| 研究の目的・ スケジュール |
ピルの意識・知識に関する全国横断調査。 |
| 主な研究成績 | 全国2000人のランダムサンプリング調査により、女性より男性にピル解禁の期待が高いこと、ピルがエイズ、STDの予防にならないことへの認識が弱いことを示した。 |
【 今期実施した国際シンポジウム及びセミナー 】
| 国際シンポジウム | 1997年 Current situation of HIV/AIDS epidemic and prevention and control efforts in industrialized countries 1998年 HIV/AIDS surveillance-current situation and future perspectives 1999年 日本-ブラジル共同シンポジウム「滞日ブラジル人社会とエイズ」 (第13回日本エイズ学界公式サテライトシンポジウム) |
| 国際セミナー | 1998年 Behavioral surveillance in relation to HIV/AIDS 1999年 The role of behavioral surveillance in HIV prevention in Asia |
【 考察と結論 】
1.研究成績から示唆されるわが国のHIV感染の現状と将来と必要な対策について
HIV感染流行は1990年代半ばから加速
厚生省エイズ動向調査への報告は増加が続き、1999年末には、HIV感染者数も患者数も過去最高を記録した[2]。国内感染した日本人男性が増加の中心で、従来の関東一極集中型から近畿への分散傾向が現れるなど、わが国のHIV流行の本格化の兆しが伺われる。本研究班の成績からも、流行が加速しつつある可能性が示唆された。例えば、推計・予測研究では、HIV感染者数は、1998年末で8,000人、2003年末で16,100であり[3]、1995年に実施された2000年の予測値7430[4]を大幅に上方修正するものとなり、流行が以前の予測を上回る速度で拡がっていることが示唆された。さらに1999年に実施された中長期予測では、2010年時点での同性間感染による感染者数は、少なくとも数万人に達すると予測されている。
HIV抗体陽性率の推移を見ても、献血検体の陽性率が上昇し、全国平均は1999年に遂に10万対1を超えた。また保健所検体の陽性率も、10万対260以上にまで上昇した(1992年の5倍以上)。そして、前身の研究班以来実施されているSTDクリニック受診者の研究では、1997年度から関東地方から陽性者が観察されるようになり、妊婦でも初年度から陽性者の検出が続いている(注:1995年まではゼロ)。これらの成績は全て、未だ諸外国に比べて低率とは言え、わが国のHIV流行が次第に拡大しつつあることを示すものと考えられる。
その他にも、1990年代の半ばには、異性間感染で流行しているHIV-1サブタイプがB型からE型シフトし、また、厚生省のSTDサーベイランスでもクラミジア感染と淋菌感染が、先進国としては例外的に増加に転じる[5]など、性行動とHIVを含む性感染症の流行に重要な変化があった時期であることが伺われる。
性行動リスクは高い状態にある
今期は、行動学的な調査が様々な集団を対象に一斉に実施され、日本人全般や種々の集団の性行動の実態が明らかにされた時期であった。まず、国際水準の性行動調査が実現し、日本人の性行動の変化や国際的特徴の一端が明らかになたが、それによれば、若者の性行動が急速に開放されて、早熟化、パートナーの多数化、性行為の多様化(オーラル、クンニリングスの常態化)が進んでおり、売買春も若者で高率であることが明らかになった。そして、国際比較の結果[6-8]、日本人の売買春率は際立って高率(日本人10数%
vs 欧米数%)であることが判明し、わが国の性行動には、先進国文化の影響の反面、アジア文化の伝統が根強く残っていることを明らかにした。
性行動の変化は18-24歳の年代でとりわけ大きく、従って、この変化は過去5年程度の範囲に特に加速したことが推察されるが、これは、先述したSTD流行の出現の時期とほぼ符合する。いずれにしても、HIVが流行しやすい条件が1990年代半ば頃から拡大していることになり、今後の流行加速が懸念される。また、売買春の実態は、わが国が他の先進国とは異なる重要なHIV感染ルートを保有していることを示しており、わが国のHIV感染が欧米とは異なるシナリオで増大していく可能性を示唆している。この点で興味深いのは、厚生省のエイズ動向調査の動向であり、わが国では、異性間感染の報告数と異性間感染の報告数がほぼ同数で増加するという特異的なパターンが現れているが(注:欧米は同性間感染・薬物静注による感染が圧倒的に優位、アジア・アフリカでは異性間感染が圧倒的優位)、上述の性行動調査の結果を勘案すれば、このパターンは、わが国の流行における異性間感染の相対的重要性を示すものとも考えられる。
また、今期は、国立大学生を対象とした大規模な性行動調査も行われ、一部ではあるが若者の性行動・性意識の一端が明らかになった。それから得られた重要な知見は、(1)多数との性行為をもち傾向が強いこと、(2)不定期な相手や多数の相手とセックスする人ほど、コンドームの使用率が低いことやコンドーム使用目的がほとんど避妊でHIV/STD予防の為に用いている人は1/5程度であることから伺われるように、HIV/STD予防意識が希薄であること、(3)STD感染経験をもつ女性の多くが性行為の相手が一人(monogamy)で、”特定安全神話”が成立していないこと、(4)ピルでHIV/STDは予防できないことを理解できていない人が多いことであり、若者の性行動の脆弱さを裏付けるものとなった。HIVの流行が加速をし始めた現在、若者の性行動リスクを減少させるための対策は、国策的重要性を持つといっても過言ではない。
種々の集団においても、HIV感染の行動リスクは、依然高い状態を維持していることが示されている。研究班の以前(1996年)の成績で、ハッテン場での同性間性行為が非常に高い感染リスクに曝されていることを示唆するデータが示されたが[9]、今期の研究では、MSMの性行動におけるセイファーセックスの徹底は不十分であり、相手の新密度が高いほどそれが緩む傾向があることが示された。注射薬物使用者については、幸い、HIV感染率はまだ極めて低いレベルにあるが、C型肝炎の蔓延や、過去1年間に注射の回し打ちが依然高率に行われているという憂慮すべき事実が明らかになり、正に一触即発の状態にあることが示された。これらの集団は、各国で深刻な流行に見舞われているが、わが国がその歴史を繰り返すことのないよう、研究と対策の強化が急務である。
懸念される異性間感染の増大
わが国のHIV感染は長らく低率であり、国際的にデータの妥当性さえ疑われてきた。しかし、今期の研究で、(1)日本人の異性間感染によるAIDS患者の増加曲線は、パートナーがMSM、静注薬物使用者であるケースを差し引いた英米白人の異性間感染によるAIDS患者とほぼ同じであること、(2)わが国のAIDS患者は英米よりも高齢であることが示された。これは言い替えれば、今後のMSM、静注薬物使用者における流行の動向次第で、わが国の異性間感染が加速する可能性があること、そして、わが国のHIV流行はまず比較的高齢層に浸入し、若年層への浸淫が遅れたことを示唆している。
将来予測で示したように、同性間感染は有効な予防対策が実施されない限り今後大きく増加する危険があるため、それに伴う異性間感染の増加はある程度避けがたいと思われる。一方、静注薬物使用者における感染爆発は極めて短期間に生じるために、予測は困難であるが、現在の回し打ち行動から見る限り、今後長期間にわたって流行を免れ得るとは考えにくく、また性行動の実態を考え併せても、静注薬物使用者からの異性間感染の増加も避けがたいと思われる。そして、若者においては、性行動の活発化と共に、STDが流行しつつあるが、STD感染はHIVに感染し易くすると共に、HIV感染をさせ易くもする要因であるため、若者のHIV感染に対する脆弱性(vulnerability)は、今後さらに高まるものと予想される。そして、わが国に特徴的な売買春が、それを加速するように作用するであろう。従って、わが国においても、近い将来流行は、英米のように若者を中心としたものへと次第に移行していくことになると推察される。エイズ動向データの出生コホート分析で示された1970年代生まれの若者症例の急増傾向は、それを反映する動きである可能性がある。
高まる輸血血液の危険性
最近わが国でも、国内での輸血血液による感染例が報告されたが、献血血液の陽性率は、その後も増加し、1999年には10万人対1を超えた。それ自体が献血血液の輸血による感染リスクの上昇を示唆しているが、特に1998年度の本研究班の研究で、HIV抗体陽性の献血血液検体中10%が低抗体価の感染早期の血液であった事実は、ウィンドウ期の血液の存在を示唆するものとして極めて重要な成績であった。献血血液の陽性率は、ヨーロッパ諸国で低下を続ける中、わが国で逆に上昇を続けており、HIV流行の程度が大きく異なるにもかかわらず、わが国の献血血液の陽性率は、ヨーロッパ諸国の中央値ほぼ等しい値となった。献血の陽性率を推定国民感染率(UNAIDSのデータ)[10]で除した指数は、わが国はヨーロッパ諸国の十倍近くにも及んでおり、わが国献血血液陽性率の異常性が浮き彫りとなった。日本赤十字社が、1999年10月に献血血液のスクリーニングに核酸増幅法(NAT)を導入したため、ウィンドウ期は半減することとなったが、NAT法を求めて、検査目的の献血者数が増加することになれば(マグネット効果)[1]、NAT導入の効果は相殺されることすらありえる。従って、リスクの高い献血者を排除するための問診の強化と共に、献血を利用しなくても済むよう、受け得やすい検査機会を積極的に拡大するという戦略が重要である。たとえば、全国の保健所の検査数が減少するままに放置されている中、東京都の南新宿検査相談所では、1993年の開設以来高い検査件数を維持し、1999年にはさらに検査数が増加している。これには検査時間(15:00-20:00)と駅に近いという利便性が重要な要因となっていると思われるが、このような受診者の便宜に配慮した検査機会の拡大や、他のHIV/AIDS流行諸国で行われているような、様々なコミュニティと共同した、より現場に密着した検査機会の創設が可及的速やかに検討し、実施される必要があろう。
外国人コミュニティにおけるリスクの集積
現在わが国の総人口に占める外国国籍者の数は合法(約151万人)[11]、非合法(約27万人)[12]を併せると、1.4%程度であるが、厚生省エイズサーベイランスに報告される感染者・患者数を構成人口比で表すと、ラテン系は日本人の約20倍、タイ人は数百倍にものぼり[13]、これら滞日外国人の一部にエイズ問題が集中していることが伺われる。
こうした重要性に鑑み、今期の研究では、ラテン系とタイを重点にコミュニティレベルの調査と予防介入研究を実施した。ラテン系住民の調査では、保健所の無料匿名検査の存在を知る人はごくわずかであることが判明し、滞日外国人がわが国の社会で情報弱者の状態に置かれている実態が示された。また、とりわけ重要であったのは、HIV陽性であることが知られると解雇あるいは国外追放されるという不安を抱いている人が相当いるという事実であった(注:実際に解雇され係争中の例もある)[14]。検査に伴う不利益への不安が、検査行動を妨げ、ひいてはHIV予防を妨げることはよく知られた事実であり、こうした誤解を解き、かつ不当な取り扱いから滞日外国人を守る施策の徹底が求められる。また、滞日タイ人についても、今期初めて、地域に居住する一般タイ人の調査を実現することができたが従来は、セックスワーカーの調査のみ)、その結果、滞日タイ人がやはり、日本からの情報から疎外されていること、男女を問わず性行動リスクが高いこと、日本人との性的交流が大きいことが示唆され、外国人向け対策の重要性が示唆された。
滞日ラテン系住民の国内人口は約30万人に達するが、重要なことは、その多くが合法的に滞在している人々であり、しかも、母国の日系社会から集団移動にも等しい状況で移民してきているという事実である[15]。こうした事情から、滞日ラテン住民が日本で置かれた状況は、母国では日本社会が想像するよりはるかに大きな重みを持って受け止められており、大きな足元の国際問題と認識し、相応の対策を講じていかなければならない。非合法滞在者に対しても、人道的観点や、日本人との性的交流が大きいという公衆衛生的観点からも、可能な限りの行政サービスが提供される必要があろう。今後人口減少のため、わが国では年々40万人の労働人口の減少が生じると言われており、その対策として、政府は外国人の就労基準を緩和する方向を打ち出している。こうした新しい状況下での有効な対策が可能となるように、人材育成を含めて、現段階から対策の経験を蓄積しておくことが必要であろう。
国民における基本的情報の欠落
今期の研究から、国民一般そして様々な集団において、重大な知識の欠落があることが明らかになった。例えば、全国性行動調査から得られた成績によれば、従来、差別偏見の防止のために強調された知識(握手、プール、くしゃみ、同居でHIVは感染しない等)は、70-80%の人に知れれ、比較的よく浸透しているが、自らの感染に関連する知識、例えば、”STD感染しているとHIVに感染しやすくなる”、”クラミジア(及びヘルペス)は性感染する”、”STDに罹っても症状がないことがある”、”STDは口から(あるいは口へ)感染する”といったSTD関連の知識、”感染後2,3日では検査してもわからない”、”保健所では無料匿名で検査ができる”といった知識は、半数以下、悪いものでは10数%の人にしか正しく認識されていなかった。これらの知識は、従来ほとんどキャンペーンされてこなかったことから当然ではあるが、HIVやSTDの流行拡大が懸念される状況では、こうしたvitalな知識の普及を急ぐ必要がある。特に、オーラルセックスの普及によって、口が性器化し、しかもコンドームがほとんど使用されていない状況では、この点の知識の普及は、STD予防の観点から極めて重要であると考えられる。
低用量経口避妊薬(ピル)に対する知識の普及も不十分である。全国調査[16]や大学生調査によれば、日本人のほとんどは、避妊のためにコンドームを使用しており、HIV/STD予防を上げる人はごく一部で、かなりの人がピルを使えばコンドームを使用しないと答えている。しかも、ピルにHIV/STD予防効果がないことを正しく認識できていない人が2-3割も存在していた。ピルでHIVやSTDが予防できるかの様な誤った記事が雑誌などに掲載されることもあり、(注:ピルはHIVとSTDも感染を促進する[17,18])、こうした現状で、ピルが普及するとコンドーム使用が減少し、HIV/STD流行が加速される恐れがある。ピルの作用に対する正しい知識を普及し、欧米におけるように、HIV/STD予防のためのコンドーム使用の促進を図ることが急務である。
啓発キャンペーンの限界
これまで、多くのキャンペーンは、実際の効果を図ることなく、漫然と行われてきた。保健所の無料匿名検査が未だに国民の半数程度にしか普及して異なことにも、その限界が現れている。
今期は、コミュニティレベルでのキャンペーン効果を評価する準実験的デザイン[19]の研究を2つ実施した。ひとつは滞日ブラジル人[20]、他は滞日スペイン語系住民における研究である。いずれもエスニックメディア(新聞、テレビ)の全面的支援を得て、重要項目に絞って、数ヶ月間集中的にキャンペーンを行った。その結果明らかになったことは、それだけのキャンペーンが、全体としてはわずかな知識の上昇しかもたらさないということであった。滞日スペイン語系住民では、キャンペーンが30歳以上の女性だけに選択的に浸透したことも明らかになった。これらの成績は、漫然としかも短期間(例:年一回)にしか行われないキャンペーンでは、実際には、”期待する効果”を生じ得ないということを示唆しており、キャンペーンを計画する場合には、十分なマーケティングを行い、様々な層に吸収しやすいような情報の加工と十分な期間を確保する必要がある。
2.今期研究の限界と残された課題について
以上、今期は、研究の構造改革に向けての大きな方向転換を実現し、様々の重要な成績を獲得した期間ではあったが、研究体制の完成にはまだ遠く、転じた方向においていかに研究を充実させるかが残された課題である。
HIVの加速が予想される状況において、今後もっとも強化されるべき研究は予防介入研究である。しかし、この分野はわが国において特に蓄積の少ない分野でもある。今期は、滞日ブラジル人と滞日スペイン語系住民において、数年をかけて準備した初めての準実験的予防介入研究を実施し、重要なデータを蓄積した。また、MSMの研究では、今期、研究者、行政、NGO、コミュニティのパートナーシップによる研究母体(MASH)が組織され、綿密かつ包括的な予防介入パッケージが準備されつつあり、本格的な予防介入に向けて画期的な前進があった。しかし、今後の異性間感染の拡大の危険を考えれば、さらに広範な対象に対する予防介入研究を展開していかなければならないことは明らかである。様々なユニットの集団(あるいはコミュニティ)をスクリーニングして、行動リスクをマッピングし、優先的に予防介入研究を実施していくこと、若者に対する予防介入研究を多数実施していくことを戦略的に展開していくことが求められる。そして、介入の成功、失敗を含めて綿密にその理由を分析し、情報として蓄積していくことが、今後の来るべき流行に対処する重要な資源になると思われる。そして、こうした予防介入の構築にあたっては、社会科学的手法の体系的な導入が必要である。今期、サンプリング、介入デザイン、行動学的調査に社会科学的な方法論を導入したが、マーケティングの導入、行動や生活実態を探る質的研究の導入などが今後の課題である。なお、予防介入という観点からは、今期は実現できなかったが、ラブホテルを見逃すことはできない。今期の全国性行動調査の概算からも、年間延べ1億回以上の利用があると推察され、予防介入の極めて重要なサイトであると考えられる。ランダム化比較試験が可能であるため、今後の予防介入研究においては、ユニークな機会となることが期待され、既に研究体制を整えつつある。
流行のモニタリングについても今まで以上の研究が必要である。なぜなら、感染症新法が施行され、感染者・患者の届け出義務に罰則が加わり、病変報告が任意となるなどの変化によって、サーベイランスデータの連続性が必ずしも担保されず、また、基本的に重複を排除できない仕組みになっているため、今後の流行拡大の過程でその矛盾がどのように拡大していくかが明らかではないからである。米国では、SHASプログラムという、サーベイランスを補完する事業がCDCによって行われているが、わが国でもそれに類する補完的研究を実施していく必要があろう。
同時に、流行の推移を極力正確にモニタリングできるように、HIV感染リスクの高い集団(男性同性愛者、外国人、STD患者、CSW、静注薬物使用者)の間背韻律のモニタリング体制を強化し、また、妊婦や献血者の感染率についても、感度の高いモニタリングを継続していく必要がある。また、感染リスクの推移をモニタリングしていくために、種々の集団における定期的な行動サーベイランス的研究を実施していくことも今後不可欠の課題である。
3.最後に 流行が拡大し、流行加速のポテンシャルの高い社会状況にあるにもかかわらず、社会的には問題が忘れられたかのような状況が続いている。STDの蔓延が始まり、ピルが解禁された今日、マスメディアの報道も含めて、全面的な社会啓発の再活性化が必要なことは明らかであろう。流行は次第に拡大しており、加速する状況にさえあるが、社会的には、それが十分感知されておらず、流行の拡大によって、検査体制をはじめとして、矛盾が際立ちつつある。21世紀を「第二のエイズの時代」として迎えるかどうか、わが国は今岐路に立っていると思われるが、HIV流行の抑止を達成するためには、早急かつ新たな予防施策の展開が求められる。そして、その方向に資する研究を展開していくことが、研究に関わる全ての人々に求められていることであると思われる。
【 参考文献 】