献血者・妊産婦グループ研究要約

-一般集団におけるHIV感染のモニタリング成績-



グループ長: 清水 勝(東京女子医大・献血科)
研究班員 :

吉澤浩司(広島大医学部・衛生学)
鈴木達夫(北里研究所・研究部)
池田久實(北海道赤十字血液センター)
高橋有二(東京都赤十字血液センター)
神谷 忠(愛知県赤十字血液センター)



  一般集団での感染者の実態を明らかにするために、全国日赤血液センターでの献血者、妊婦、外来・入院患者、特に輸血患者、透析患者、さらに多数の血漿をプールして造られるロットの異なる市販免疫グロブリンと市販標準管理血清を対象にして、全国規模でのHIV感染のモニタリングを行った。1999年の献血者(約614万人)における抗体陽性者は63人(1.02人/10万人)と過去最高となり、1989年より一貫して増加しており、特に首都圏では1,441,484人中38人(2.64人/10万人)と著増し、全国でも北海道、東北、九州ブロックでほぼ同程度の増加がみられ、しかも頻回献血者が必ずしも安全ではないとの結果もえられたが、この傾向は先進国中ではわが国だけである。献血の啓蒙や献血時の問診の在り方と共に特に国民一般に対するエイズの教育・啓蒙が未だ不十分であることを示すものであろう。献血時にHIV感染が判明して、全国拠点病院を受診した人についてその感染ルート、献血の動機(検査目的か否か等)について調査を実施したところ、35人の回答が得られ、感染経路としては、男性同性愛者(MSM)が22人(2人が同性愛者団体に属す)と多く、問診時にこれらの人々の献血を断わっているにも拘わらず、その実効性のないことを示していると言える。献血の動機では、明らかな検査目的が6人(17%)で、このうち2人は頻回献血者でっあったことから、頻回献血者についても問診の重要性は変わらないと言えよう。 一方、献血ルームでの献血者676人を対象に行われたアンケート調査では、検査目的の献血の排除あるいは問診14番目の各項目の理解度はいずれも95%以上と高率であり、エイズ検査の結果を通知すべきとの意見は73%であるが、すべきではないとの見解の27%のうちの90%は検査目的を防止するということであった。さらに、感染の不安のあるときの検査の必要性は大多数の人が認めていたが、検査場所としては医療機関が43%、保健所が52%、献血時が5%であった。しかし、「保健所へは行き難い」との回答が医療機関とした人の5.5%、献血時と答えた人の31%もあったことから、その理由を明確にしてそのような状況を積極的に改善していくべきであろう。なお、1999年1人のwindow期の献血者血液の輸血によるHIV感染が2人確認報告されたが、献血血液に対する核酸増幅検査(NAT)が導入される直前に採血された血液であった。NATは1999年10月には全国的に導入され、window期が約11〜16日程度に短縮されたことから、NAT検査の導入による磁石効果があるとすれば保健所などでの検査の早期導入を図ること、さらに現行のスクリーニングがどの程度安全性を保証しているのかを見極めるために、今後多施設での受血者の追跡調査を行なうことなどが必要とされるであろう。 妊婦を対象としたモニタリングは今回もほぼ全国的に調査できた(28都道府県)。対象者数は169,013人で、1999年の出生数が1,175,000人であったことから、約14.5%に相当する。HIV抗体陽性者数は11人(日本人1人、外国人8人、国籍不明2人)で、10万人あたり6.77人であり、1996年の5.3人、1997年の4.4人よりも漸増傾向にあったが、外国人妊婦が8人と急増傾向が窺え感染拡大傾向がうかがえた。感染予防対策の指針を早急に確立することが望まれる。その他の集団では例年と大差のない状況であった。