血清・遺伝子疫学グループ
-平成11年度総括報告書要約-



グループ長: 今井 光信(神奈川県衛生研究所)
研究班員 : 田村 正秀 (北海道立衛生研究所)
土井 幹雄(茨城県衛生研究所)
後藤 敦(埼玉県衛生研究所)
仲野 仁忠(山梨県衛生公害研究所)
大石 功(大阪府立公衆衛生研究所)
池田 義文(広島市衛生研究所)
井上 博雄(愛媛県立衛生研究所)
千々和勝己(福岡県保健環境研究所)

  角田 喜亮(仙台市衛生研究所)
水口 康雄(千葉県衛生研究所)
関根 大正(東京都立衛生研究所)
飯田 和質(福井県衛生研究所)
川村 隆(兵庫県立衛生研究所)
坂本 征則(広島県保健環境センター)
鈴木 康元(愛知県衛生研究所)
  植田 昌宏(SRL研究所)
飯田 暢子(東京都立駒込病院)
吉原なみ子(感染研エイズ研究センター)
武部 豊 (感染研エイズ研究センター)
山本 直彦(名古屋大学 実験動物 施設)
園田 俊郎(鹿児島大学 医学部)
速水 正憲(京都大学ウイルス研付属免疫不全ウイルス施設)
  山中 烈次(日本赤十字社)
加藤 真吾(慶応大学 医学部)
木原 正博(神奈川県立がんセンター)
佐藤 裕徳(感染研エイズ研究センター)
塩田 達雄(東京大学医科学研究所)
市村 宏(金沢大学 医学部)
研究協力者: 工藤 伸一(北海道立衛生研究所)
原 孝(茨城県衛生研究所)
海保 郁男(千葉県衛生研究所)
野田 雅博(広島県保健環境センター)
近藤真規子(神奈川県衛生研究所)
町田 篤彦(山梨県衛生公害研究所)
村岡 道夫(福井県衛生研究所)
石橋 哲也(福岡県保健環境研究所)
武久 盾(京都大学ウイルス研究所)

  大竹 徹(大阪府立公衆衛生研究所)
近平 雅嗣(兵庫県立衛生研究所)
貞升 健志(東京都立衛生研究所)
斎藤 隆行(神奈川県衛生研究所)
高橋 一博(愛媛県衛生研究所)
佐藤 克彦(愛知県衛生研究所)
山田 光男(保健科学研究所)
杉本 和敏(江東微生物研究所)



【 グループの目的及び構成 】

  本グループは下記の目的の研究及び事業を全国レベルで推進するため日本の各地域の衛生研究所・民間検査センター・大学及び国立の研究所等を研究拠点とし、上記の班員及び研究協力者を中心に研究を行っている。

  1. HIV抗体検査希望者(保健所採血および病院採血)の疫学調査
  2. 各地域のHIV患者からのHIV分離と分離株の解析と保存及びその疫学調査
  3. HIV感染の感受性に関する疫学研究
  4. HIV検査法の開発・検討・評価
  5. HIV検査法の標準化と普及(技術講習会)
  6. アジア・アフリカにおけるHIV感染の疫学研究

 

【 日本のHIV感染 】

  1. 保健所等におけるHIV検査の動向

     平成11年(1999年)には保健所でのHIV検査の陽性数は109例(平成10年は101例)と過去最高であった。
     保健所での検査数は、テレビドラマの影響で一時的に増加した昨年(平成10年)に比べると減少しているが、一昨年(平成9年)に比べるとやや増加しており、ここ数年続いていた減少傾向から横ばい傾向に移りつつある可能性も考えられる。
     保健所検査で特筆すべき事として、検査数、検査陽性数ともに都内の特定の検査施設に集中しており、全国の保健所検査での陽性数の48%がこの一ヶ所の検査施設で見出されていることがわかった。
     平成11年における、保健所検査におけるHIV抗体陽性数を都道府県別に見ると、東京が66例と最も多く、以下、神奈川(9)、愛知(7)、茨城(6)、大阪(5)、福岡(4)、埼玉(3)、千葉(3)の順であった。
     東京での陽性数が多い一方、千葉、埼玉等その周辺県でのHIV抗体陽性数は非常に少ない傾向が見られた。

  2. 保健所のHIV検査への遺伝子検査の試験的導入

     日本赤十字血液センターでは、ウインドウ期の輸血後感染を防止するため、平成11年10月より全献血血液について、HIV、HBV及びHCVの遺伝子検査を行っている。
     より早い時期にウイルス感染を検出することにより、ウインドウ期を短縮できる一方、マグネット効果による逆効果も懸念されている。
     このマグネット効果を防止するためには、保健所のHIV検査にも遺伝子検査を導入する等HIV検査体制の充実が緊急課題となっている。このため、本研究グループでは、大和保健所(神奈川県内の保健所で夜間検査も行っている保健所)をモデル保健所として、平成11年7月より遺伝子検査の試験的導入を行い、その効果と問題点等を検討した。
     遺伝子検査導入の効果としては、遺伝子検査導入後のHIV検査希望者数が導入前の2倍弱に増加しており、遺伝子検査導入がかなりのマグネット効果を持つことが実証できた。

  3. 献血者の自己申告血液の解析結果

     県結語に自分がHIV感染のリスクが高い事を自覚した場合、献血後3時間以内に指定された番号に電話し、献血の際のコード番号を申告し、自分の献血血液の使用を中止してもらう"自己申告制度"がどの程度機能しているかを調べる目的で、自己申告者の血液について、各種STDマーカーの検査を行い通常の献血者との陽性率の比較を行った。
     性感染症のリスクに対する指標として用いられる、クラミジア抗体について測定した結果、一般献血者7.5%(35/519例)に対して、自己申告では14.2%(38/267例)と高い陽性率を示した。また、梅毒抗体も自己申告で1.8%と一般献血の0.22%に比べかなり高かった。
     陽性例が少ないため陽性率の比較には問題があるが、HIV抗体に関しても、自己申告例では1,781例中2例(0.11%)がHIV抗体陽性であり、一般献血者の0.001%に比べ極めて高かった。
     以上の結果より、自己申告制度は性感染リスクの高い献血者の血液を輸血用血液から除外するため、一定の機能を果たしていることが分かった。