平成11年度グループ研究要約
-滞日外国人のHIV、STD関連知識、行動及び予防・支援対策の開発に関する研究-
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| 研究代表者: | 木原正博(神奈川県立がんセンター臨床研究所研究第三科) |
| 研究班員 : | 岩城エリーザ(CRIATIVOS、財団法人エイズ予防財団) 小堀栄子(結核予防会結核研究所) ナンティヤー・パノムガーン(杏林大学国際協力研究科) 今井光信(神奈川県衛生研究所ウイルス部) 木原雅子(CAPS international program, UCSF) 市川誠一(神奈川県立衛生短期大学衛生技術科) 大屋日登美(神奈川県立衛生短期大学衛生技術科) 小林米幸(AMDA国際医療情報センター) 河野弘子(新宿区保健所) 清水源之(清水医院) 杉本和敏(江東微研) |
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【 研究目的 】
総人口の1%をしめる滞日外国人は、わが国の典型的なvulnerable populationのひとつであり、厚生省エイズサーベイランスに報告された外国人数は、総報告数の約半数にも及ぶが、疫学的アプローチが難しく、しかも行政施策からもっとも疎外された集団のひとつである。本研究では、その感染、知識、行動に関する社会的状況を把握するとともに、evidence-basedアプローチを積み重ねつつそれぞれのコミュニティの社会文化の文脈に即した予防対策・支援のモデルを探求する。
【 研究課題別の目的、研究方法の概要 】
| 研究テーマ | 1.ラテンプロジェクト |
| 研究担当者 |
岩城エリーザ、木原正博、木原雅子、大屋日登美 |
| 研究目的 | 滞日ラテン系住民のHIV/AIDS/STDに関連する知識や行動の実態を把握し、予防・ケアのための対策モデルを構築する。 |
| 研究方法 | 準実験的研究(Pretest-posttestデザイン)による予防介入研究。滞日ブラジル人およびスペイン語系住民の集住する地域においてvenue-based samplingを行い、事前事後のアンケート調査を実施。介入はエスニックメディア(新聞、テレビ)を利用。 |
| 研究テーマ | 2.タイ・プロジェクト |
| 研究担当者 | 小堀栄子、ナンティヤー・パノムガーン、木原雅子、木原正博 |
| 研究目的 | 滞日タイ住民のHIV/AIDS/STDに関連する知識や行動の実態を把握し、予防・ケアのための対策モデルを構築する。 |
| 研究方法 | 準実験的研究(Pretest-posttestデザイン)による予防介入研究。本年度は、予防介入の可能性を検討するための社会学的フィールド調査を実施。 |
| 研究テーマ | 3.滞日外国人女性のHIV抗体陽性率のモニタリング |
| 研究担当者 | 木原正博、今井光信、清水源之、小林米幸 |
| 研究目的 | 医療機関を受診する外国人女性のHIV抗体陽性率をモニターする。 |
| 研究方法 | 茨城、長野、神奈川県の定点医療機関における血清疫学的調査。 |
| 研究テーマ | 4.保健サービス利用状況の調査 |
| 研究担当者 | 河野弘子、小林米幸 |
| 研究目的 | 電話相談という窓口から、滞日外国人社会でのHIV/AIDS関連の問題の質を推定する。 |
| 研究方法 |
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【 研究結果の概要 】
◆ラテンプロジェクト
(1)スペイン語系住民の第一次予防介入の効果評価

第一次予防介入研究のフォローアップ調査を実施した。ベースライン調査(1998年、n=257)と同一の方法・場所(神奈川、東京、栃木)で実施し、330名から調査票を回収した(回収率91.4%)。介入は、ベースライン調査で特に不足が大きかった9項目(下表)の知識を、マスメディア(スペイン語新聞およびテレビ[SkyPerfect TV]による4ヶ月間の集中キャンペーン、1998年)の協力を得て重点的に実施した。
その結果、介入前後で5%以上の改善が検出されたのは、全体では、「エイズの延命治療」(+10%)、「感染後2-3日では通常の検査では感染の有無はわからない」(+5%)、「他のSTDに罹るとHIVに感染しやすくなる」(+7%)、「HIV陽性でも国外追放されない」(+7%)のみで、昨年度の滞日ブラジル人での研究の場合同様、予防介入の規模や期間の割には、介入効果が小さいことが明らかになった。しかし、性別、年齢別に同じデータを分析すると、30歳女性のグループ(n=44)においてのみ、介入効果がほぼすべての項目について、10-30%と大きく上昇していることが判明した。つまり、この集団においては、介入は、集団全体に均等に浸透したのではなく、30歳以上の女性に選択的に浸透したことが示された。これは、社会的キャンペーンのマーケティング上留意されるべき重要な成績である。また、この集団においては、キャンペーン期間後、コンドーム使用はむしろ減少した。同期間中に何らかの逆向きの要因が加わったものと考えられるが、この点については、宗教の影響を含め、今後社会学的検討を加えたい。
(2)ブラジル人に対する第二次予防介入のためのベースライン調査
ブラジル人の集住する4県(群馬、愛知、東京、静岡)5地点でアンケート調査を行い、、776のアンケートを回収し(回収率95%)、ベースライン分析を行った。
◆タイプロジェクト
滞日タイ人コミュニティにおける予防介入研究を実施するための予備調査として、茨城県某地域において数次のフィールド調査を実施した。その結果、滞日タイ人の医療機関へのアクセスを妨げる要因として、(1)情報疎外、(2)言語障壁、(3)医療機関の差別的対応への不安などが示唆され、今後の予防対策研究においては、(1)タイ語ビデオへのメッセージの挿入、タイ食材店およびタイ料理店を通じた情報の提供、(2)コミュニティ内の既存保健医療施設である保健所との連携やタイ語による電話相談サービスの活用、(3)診療受け入れ医療機関のネットワークの構築・民間保険情報の提供・通訳サービスの提供など、が必要であることが示唆された。
◆滞日外国人女性のHIV抗体陽性率の定点医療機関モニタリング
神奈川、茨城県の総検査件数は、1992年の883件から1999年の54件と減少を続けている。1992-1999年のHIV抗体陽性率は、2.1%(57/2670)であり、大きな年間変動はなかった。
◆社会サービス利用状況のモニタリング
新宿保健所:HIV検査受検者は、昨年度に比べ、タイ語系と英語系が増加、ラテン系が減少した。抗体陽性率は、1994年以降の累計で2.9%(15/510)で大きな年間変動はない。電話相談件数はラテン系が減少、英語系が増加した。
AMDA国際医療情報センター:1999年のエイズ関連相談件数は、延べ86件(実71件)と、98年度の210件から大幅に減少した。実71件中、35件が感染者自身からの相談であり、その内、タイ人が25件、中国人が3件を占めていた。