わが国におけるAIDS症例およびHIV感染者の臨床疫学と追跡調査
-HIV感染者/AIDS患者グループ研究要約‐



磯村思无、山本直彦(名古屋大学医学部国際保健医療学)
森下高行、佐藤克彦(愛知県衛生研究所微生物部)


 

【 研究要旨 】

  東海地区居住のMSM者集団におけるHIV抗体保有状況を参加者各自のHIV感染に関与する因子として性行動などの行動疫学調査、STD罹患状況調査と同時に実施した。本研究は昭和61年以来の継続調査として実施されていてHIV抗体保有率は過去12年間殆ど変化していなかったが本年度では増加傾向を示し(4/64例)、抗体陰性者にも不特定相手で防御手段のない肛門性交などの性行動上問題をもち梅毒などの性感染症を持つ者が多く今後の継続的調査が重要と思われる。

 

A.研究目的

 本邦におけるHIV侵襲状況調査の一つとして男性同性愛者/両性愛者集団(MSM)を対象としてHIV抗体保有状況を調査し、同時に各対象者の性行動などHIV感染に関与する因子と梅毒などのSTDの疫学調査を行ってHIV感染の危険度を検討する。

 

B.研究方法

 名古屋市内のMSM集団が利用するいくつかの施設で定期的に匿名採血、無料検査を実施。検査結果の説明に際し電話インタビューで背景調査や性行動調査を実施し(陽性結果例の場合は直接面接して説明)同時に各種の相談に応じた。
 抗体測定法:スクリーニング:ELISA法またはPA法。確認検査:WB法。

 

C.研究結果

  1.  参加数と陽性率:平成11年度は参加者64名中、新規参加者2名、再来者2名、計4名(6.3%)が陽性であった。
  2.  参加者の95%から電話による情報提供が得られた。殆どが東海地区居住者でSTD歴を有するものが多く、両性愛者よりも同性愛者が多かった。参加者の年齢分布は20歳~50歳代が多く、大半は青年期から同性愛を開始していて経験年数は幅が広い(青年層で最近開始した例が目立つ)。
     性交渉相手は相手数1人で特定相手の群と不特定で相手数少数の群、不特定多数の群に分かれる。肛門性交をしている群がやや多く、この群ではコンドームを以前から使用している例・最近使用している例と、使用しない例が目立つ。今回発見された2例の新規参加の抗体陽性者、2例の抗体陽転者は全員不特定相手とコンドームなしで肛門性交を続けいてる危険行動群に属していた。
     STD頻度の指標として、STD病歴と梅毒血清反応陽性頻度を調査したが共に陽性者が多く、特に青年層で危険行動の多い群に目立った。その他のHIV感染リスクファクターについては、外国人と性交渉をもったものは少なく、薬剤常用者も殆どいなかった。

 

D.考察

 今回の結果から、調査対象集団におけるHIV侵襲が増加傾向にあり、感染リスクの高い性行動をとる群から4名の陽性者が発見された。危険行動をとるものが目立つこと、STD高頻度からは今後も調査継続が必要と思われる。